50×50。
食べ歩きを書くずーっと前の話。
現在はミシン店になってしまった蕎麦屋が好きで,家族でよく通っていた。 長ーいアナゴ天が人気で,昼時はすぐ売り切れるのだが, その日は運よくありつくことができ,座敷の長いテーブルに相席して到着を待つ。 ほどなく着席した男性客が 「アナゴ天!」と注文すると 「ごめんなさーい,たったいま売り切れになりましたー」と店員さん。 悔し気に舌打ちし,他のものを注文する男性客。 もしかしてだけど・・・ 私の注文が最後のソレだったんだろうか・・・ 到着まで時間のかかる店ではあったが,かなりドキドキして待つことになった。 「お待たせしましたー,アナゴ天とざるです~」 私へ運んでくる店員の声に,さっきの男性客がギッとこちらを向き,睨んでくる。 家族とアナゴを分けっこして口に運ぶ間,ずーっと睨まれていた・・・ そんな空気のなか,睨む男性客と同年代のメガネの男性と, その両親と思しきメガネの老夫婦が隣のテーブルに通された。 メガネ氏はたいへん怒っていらだっている様子。 両親はなだめる風でもなく,黙っている。 やがてメガネ氏は携帯を取り出し,その場でまくしたてる。 「まだ時間がかかるのか!こっちは待ってられないんだよ! はあ?向かってるからあと15分くらいかかる? お前はいつもそうだな!先に食ってるからな!」 電話の相手はメガネ氏の妻のようだ。 そば屋で昼食の待ち合わせをしていたが,遅れるらしい。 メガネ氏は自分と両親にだけ天ざるを注文し,やがて到着すると三人は食べ始めた。 そこへ奥さんが遅れてようやく着席。 「ごめんなさい。どうしても抜けられなくて・・・」 相手のある仕事だったらしい。15分はとうに過ぎている。 店員に注文を聞かれ,食べている三人に合わせて天ざるを注文する。 「ほんっとにお前はだめだな!いつもいつもぐずぐずして!」 周囲の客が驚いて見ているにもかかわらず,大声でずっと奥さんを罵倒し, 憤慨しながらそばをすするメガネ氏。 それを一切なだめるでもなく無言で食事をする両親。 奥さんの注文した天ざるが到着する前に三人は食べ終わり, メガネ氏は当然のように席に伝票を残し,両親を伴いさっさと退店していった。 あとにポツンと一人残された奥さんのもとに,天ざるが到着。 ぐすん,と一度ハナをすすった奥さんは, 何かを振り切るように首を横に振ってから,天ざるをガシガシ食べ始めた。 「だいじょうぶですか?」と声をかけたら 奥さんの我慢しているものが,堰を切ってしまうかもしれないと思い, いたたまれない気持ちな私も,睨む視線を振り切ってアナゴ天をガシガシ食べた。 普段見ることなどない2時間サスペンスを何気に最後まで見てしまった。 医師同士で結婚した夫婦。 夫は放蕩三昧だが妻は夫に叱られまいと我慢し,夫の愛人の挑発にも耐えていたが その愛人が何者かに殺されてしまい・・・(以下略) ラストにヒロイン名取裕子が言ったセリフ。 「夫婦は50対50。掛け算すれば2500。 60対40なら2400になるし,どんどん少なくなっていく。 対等な,50対50がいちばんなの!」 80対20なら1600。 100対0ならゼロだ。 大ピンチに陥った名取裕子を,最高のタイミングで宅麻伸が助けに来たところで そば屋にいた,あの奥さんを思い出していた。 100対0でも,続くかぎりは毎日をこなしていかなければならない。 そのためには,まずは食べよう!と自分を奮い立たせたのだろうか。 ![]() 大好きだったけど,閉店してしまったお店の天ざる。 日々を一日いちにちとこなしていれば,またこんな美味しいお店に巡り合えて, 幸せな気分になれるかもしれない。 よろしかったらぽちっとな☆φ(^o^) ![]() にほんブログ村 |
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No title
なんか・・・
あねっちゃさんの体験したコトがドラマみたいで、
読みながら涙がでちゃいました。
私がメガネの妻だったら、きっと泣いちゃう。
っていうか、その場にいたら泣いちゃってたかも。
あねっちゃさんの体験したコトがドラマみたいで、
読みながら涙がでちゃいました。
私がメガネの妻だったら、きっと泣いちゃう。
っていうか、その場にいたら泣いちゃってたかも。
同一人物だったりして
そのメガネ氏そっくりの客が昨日来ました。
仕事で別居してるらしく、奥さんの親の法事で帰って来たらしい
腰が痛いという夫を思い遣る奥さんが ウチに連れて来たのに
「こんなべってえとこ。ああ損した。道後温泉に行けばよかった。法事なんて来ねばよかった。俺とは赤の他人だし くたばってからまで迷惑かけんなよって。まったくお前はいつも・・・かったるいんだよ」
奥さんが「農家蕎麦屋さんの予約時間だから」と話をはさんだら
「せかしたな!何でせかすんだよ。理由言ってみろ・・・」
たまらず「ぐだぐだぐだぐだ。どこでもドア持ってないんだし、ここから四国にワープできないんだから 言ってもしようがないこと言わないで!聞いてるほうまで疲れちゃう!」
逆ギレされるかと思ったら呆気にとられてそそくそ帰ったメガネ氏。
きっと女が言い返すわけないとタカを括った人生送ってきたんでしょうね。
蕎麦屋さんでも言葉のDV夫に傷め付けられてるであろう奥さんを思って溜息な日曜でした
仕事で別居してるらしく、奥さんの親の法事で帰って来たらしい
腰が痛いという夫を思い遣る奥さんが ウチに連れて来たのに
「こんなべってえとこ。ああ損した。道後温泉に行けばよかった。法事なんて来ねばよかった。俺とは赤の他人だし くたばってからまで迷惑かけんなよって。まったくお前はいつも・・・かったるいんだよ」
奥さんが「農家蕎麦屋さんの予約時間だから」と話をはさんだら
「せかしたな!何でせかすんだよ。理由言ってみろ・・・」
たまらず「ぐだぐだぐだぐだ。どこでもドア持ってないんだし、ここから四国にワープできないんだから 言ってもしようがないこと言わないで!聞いてるほうまで疲れちゃう!」
逆ギレされるかと思ったら呆気にとられてそそくそ帰ったメガネ氏。
きっと女が言い返すわけないとタカを括った人生送ってきたんでしょうね。
蕎麦屋さんでも言葉のDV夫に傷め付けられてるであろう奥さんを思って溜息な日曜でした

>ままはな さま。
あの奥さん,いまもああいうふうに怒鳴られてるのかな・・・と
天ざるを食べるとき,ふとよみがえります。
笑顔でいてくれたらいいな。
天ざるを食べるとき,ふとよみがえります。
笑顔でいてくれたらいいな。
>ゆっこ さま。
ほんとそうかも(苦笑)
旦那さんもさることながら,とがめない親御さんが怖かったです・・・
このご家庭では,女の立ち位置はその程度なのでしょう。
旦那さんもさることながら,とがめない親御さんが怖かったです・・・
このご家庭では,女の立ち位置はその程度なのでしょう。